ロンドンの街中では、オシャレで、そこそこおいしいレストランを探すのは苦労しないが、住宅地となると地域によっては選択の余地がない。ロンドン北部、ターンパ−ク・レイン(Turnpike Lane)、アレキサンドラ・パレス(Alexandra Palace)は、これといった特徴のある街ではないが、食やアートに興味を持つ若者層をターゲットとした、広大な集合住宅地として開発が進められている。その名の通り「The pumphouse」は、元揚水所の建物を利用した高い天井と広い空間を持つ、まるでロンドンの中心部にあるようなレストランとして出来上がった。
料理は、ピザやパスタなどのイタリアン、マッシュポテト+魚や肉といったブリティッシュが基本だが、エッセンスとしてアジア風のテイストを若干取り入れているようだ。
スターターに、タイ風鴨サラダ(Thai Duck Salad £8)を頼んだ。鴨の味付けは醤油系べ−スで、なかなかうまく仕上がっている。ちょっぴり残念なのは、ショウガのスライスが少し大きく味が強すぎた。アクセントをきかせようとしているのだろうが、もう少し小さければ文句なしのスターターだ。メインのメニューで目にとまったのは、豚バラ肉とマッシュポテト(Pork Belly w mustard mash £11 1/2)。メニュー表記にも遊び心があり、所々が省略されている。例えば、w mustardのwは、withのことで、tomはtomato、BT CokeはBottleのことらしい。また、料金も £11.50が、11 1/2と表示されるなど、一瞬戸惑ってしまうがなかなかおもしろい。
さて、このメイン料理、運ばれてきた瞬間に、ワァーと小さな歓声をあげる客がいるくらいインパクトがある。メニューから想像すると、もっと単純な料理がでてきそうだが、実物は大きな皿からはみ出すくらいの豚バラ肉が、マッシュポテトに乗り、モダンブリティッシュ風に仕上げられている。肝心の味だが、外はカリカリ、中はしっとり柔らかく料理された豚肉に、マスタードの入ったマッシュポテトとソースをつけて食べれば、そのコンビネーションに大満足。連れが頼んだのは、トマトとマスカルポーネのペンネ(Caramelised Onion Tomato+ Mascarpone Penne £9)。ローストすることでトマトとタマネギの味が、炒めるよりまろやかになり、固めにゆでられたペンネといい具合に仕上がっている。ピリッとしたコショウの味も効いている。運ばれていくピザもなかなかおいしそうだ。ここまでおいしく食べてきたら、やはりデザートも試してみたくなる。甘いのを覚悟で、トフィー・プディング(Sticky Toffee Pudding £5 1/2)を注文。プディングはしっとりとソフトに品よく仕上がっている。さすがに甘いので、サイドにあるトフィーのソースには手を出せなかった。
特別エキサイティングな料理はないが、定番をちょっぴり現代風にアレンジし、クオリティを保ってサーブするという賢いレストランだ。広々としているので子供連れでもまったく問題ない。また、隣には、ロイヤル・アカデミーのギャラリーもあり、新しい休日の過ごし方が増えそうだ。
|