連日大勢のツアリストで賑わうナショナル・ギャラリー。この中のSainsbury Wingにあるレストラン「The National Dining Room」に行ってみた。
まず店内に足を踏み入れると、中はとても広いのに驚いた。入って右側がカフェ、左側がレストランと分かれているのだが、両方合わせて100人は入れる広さだ。でも博物館や美術館にありがちな大衆食堂とは全く異なる。落ち着いた照明にゆったりとした席でリラックスでき、太陽の光がふんだんに注がれる大きな窓からは、トラファルガー・スクエアーが見渡せる。
メニューにはモダン・ブリティッシュ料理が並ぶ。全ての食材をイギリス国内から取り入れ、新鮮で季節に合ったものだけを提供するという徹底ぶりだ。料理名にはDoset(ドーセット)やEccles(エクルズ)など、イギリスの地名の付いているものが多くある。
その中でスターターにスモークサーモン(Oak smoked Scottish smoked salmon)、メインにローストチキン(Poached and roasted Goosnargh chicken with wild garlic and leeks)、デザートにカラメル・ラズベリー・カスタード(caramelised raspberry custard)を注文。ランチ3コースセットで29.50ポンドと、お値段は少々高い。
注文後5分でスモークサーモンが運ばれてきた。鮮やかな色をしたサーモンに半分に切られたレモンのみが付いていて、見かけはとてもシンプル。サーモンは口の中でスモークされた香りが広がり、やわらかくて美味しく頂いた。
メインのチキンは、お皿の中でガーリックとねぎ(leek) が無造作に置かれ、盛り付け方があまり美しくない。その上不思議な抹茶色のムースが見える。ウェイターにこれは何か聞いてみた。すると「ワイルド・ガーリックの葉っぱで作ったムース。チキンの上にのっている葉っぱと同じで、これをムース状にしたものだよ」と笑顔で答えてくれた。味は塩味のムースで、見かけから予想できる苦味も臭みもほとんどない。メインのチキンを食べてみる。これはやわらかいが、とてもあっさりとした味で、ソースをたくさん付けても大して変わらない。うす味で健康には良いのかもしれない。しかし淡白な味に途中で飽きてしましい、最後は塩と胡椒をかけて食べ終えた。一方、大きくカットされた付け合せのねぎ(leek)は、素材の甘みがたっぷり感じられ、美味しく頂いた。
デザートのラズベリー・カスタードは小さなお皿に入り、ちょっと上品な感じ。表面のカリカリで熱いカラメルの下に、冷たいラズベリー入りのカスタードクリームが入っている。カスタードクリームの甘さとラズベリーの酸っぱさがマッチし、味は良い。ただ量がやや少なく、カスタードクリームが小さな皿の半分以下までしか入っていなかったのが少し残念だった。
ギャラリーの中にしてはとてもキレイで品のあるレストラン。絵画鑑賞の途中でゆっくりと食事をしたい方には良いかも。(千晶)
2007年5月取材 |