パリ在住の方が連れて行ってくださったレストランがとてもよかったのでご紹介したい。パリ中心部、オペラ座の北、9区にある「Chez Jean」は、ミシェラン1星のレストラン。訪れたのは、金曜日の8時だったが、我々が一番目のお客だ。やはりパリも夕食が始まるのが遅いようだ。テーブルにつくと、オーナーのジャン=フランソワー・ギトニ氏が来て、片言の日本語で話しかけてくれた。彼は、老舗のミシェラン星のレストラン、タイユヴァンで長年給仕長をしていた。その間に日本に行き、しばらく滞在していたため、簡単な日本語は分かるそうだ。パリのレストランにて日本語で話しかけられるのは、なんだかうれしいなぁ。
メニューと一緒に出されたアミューズブッシュ<その1>は、チーズとピーナッツが入ったビスケット。お腹がすいすいているので、ちょっとつまみながらメニューを見る。
さて、注文だ。セットメニュー(€65〜)もあるが、我々は単品で選ぶ事にした。私は、ロンドンではなかなか食べられない春の名物、白アスパラガスのサラダ(Parc Floral €17)に決めた。お連れの方は、ラングスティンとタラモのブイオンンソース仕立て(Un Pays Merveilleux €18)をオーダー。
スターターが出るまでにだされたアミューズブッシュ<その2>は、ふた口程度のスープ。ラングスティンの味が効いたこのスープには、クミンの後味があり、これから始まる食事に程よい刺激を与えてくれる。
白アスパラは、季節の花、ミモザをイメージして盛りつけられた黄色がアクセントになり、なんとも可愛らしく盛りつけているではないか。ゆで卵に入った岩塩のしっかりした味と、一番下のブラックソーセージの強い味が淡白なアスパラガスとよくあう。一方、お連れのラングスティンは、エビのしっとりと甘さがでていて、タラモ味が効き、複雑な味付けでありながら、さっぱりとしている一品だ。ワインは、ちょっと発砲している白でVouvrav La Dilettante 2004 €26。爽やかでおいしい。
メインに頼んだのは、鱸のソテー(17:Les Pompiers €37)には、ムール貝とクミンがきいたムース状のソースがかかっているが、新鮮な鱸の本来の味を壊さないなかなか凝った一品だ。サイドについた 緑のミントソースが彩りを添えている。お連れのホタテのソテー(Le Pelerin de Compostelle €35)は、ゴマをつけて串さしにしている。味もさっぱりしていて,なんとも日本の影響を受けているように見える。全体的にソースを多く使うフランス料理なのに、ここのはめずらしく素材の良さを引き出す料理法が多い。
そして、お楽しみのデザート。オレンジタルト(Orange Mecanique €11)は、想像していた従来のタルトとは、形状も味も異なっていた。さすが、ミシュラン1星のレストランだ。コアントローが入った濃厚なチョコレートクリームの上に、アルコール漬けのジンジャーが入ったタルトは、サクッとしながら、しっとりしている。付け合わせのチョコレートアイスには、ローズマリーが効いていて、盛りつけといい、複雑に構成されているこのデザートに脱帽だ。お連れのデザートは、本日のお勧めで、暖かいアーモンドとグレープフルーツのタルトにピスタチオのアイスがついている。その盛りつけのカラーといい、アクセントにしているチョコレートソースのアート感覚といい、見ていて楽しいデザートだ。
お腹も満腹だが、コーヒーを頼む。するとミニャルディーズ(食後の小さなお菓子)のトローリがでてきた。7個のガラスポットに入った小さなお菓子の中から、 好きな物が選べる。もちろん全てを頼んでもいい。 リキュール付けのチェリー、パッションフルール入りのメレンゲ、マシュマロ、果実入りのゼリー、アーモンド入りチョコなど、 それぞれは、小さく一口サイズで愛らしい。フレンチレストランのアミューズブッシュといい、これといい遊び心がうれしいな。
締めて2人で合計€158.80。一人約55ポンドとロンドンに比べてうれしい金額。ゆったりした店内、いごこちのよいパリでお勧めのレストランと言える。(か)
2007年3月取材 |