ホワイトチャペル・ベル・ファウンドリー

ビッグ・ベンを造った伝統のベル工場で博物館訪問と工場見学を。

ロンドン、イースト・エンドに、ベル工場「ホワイトチャペル・ベル・ファウンドリー」がある。創業1570年(最近それよりずっと古い創業だったという資料が見つかったらしいが)。英国最古の製造業者、また「現存する世界最古の企業」リストでもトップ10入りする伝統ある工場として、大から小までさまざまな鐘を500年近くにわたって造り続けてきた。有名な鐘の鋳造も多く、代表作として、アメリカの独立を告げたリバティ・ベル、英国国会議事堂に附属するビッグベンの鐘がある。このほかロンドン、ウェストミンスター寺院の鐘、セント・ポール大聖堂のクロック・ベルもこの工場で製造されたもの。新しいところでは、2012年のロンドン・オリンピック開会式に登場した23トンもの超巨大ベルがある。

古くから輸出も行っており、英国内だけでなく、アメリカ、カナダなどの多くの教会でここの鐘が使われている。音の高さの異なる鐘を組合せ、数人でロープを引っ張って鳴らすカリヨン・ベルの音色は大変にチャーミング。ロンドンでは住宅が密集して音に敏感なせいか、教会の鐘の音が昔ほど聞かれなくなってしまったが、カントリーサイドへ行くと、時報の鐘、さあ家に帰りましょうという感じの夕方の鐘が教会塔から聞こえてくる。子供の頃からヨーロッパの鐘の音を聞いて育ってきたわけではないのに、この牧歌的な響きを聞くと、なぜかとてもなつかしい気がする。英国を旅する時あなたが耳にする教会や時計塔の鐘のいくつかは、ホワイトチャペル・ベル工場製かもしれない。

・・・続きは
清水晶子(ロンドン在住ジャーナリスト)の「ロンドンのミュージック&ミュージアム」でどうぞ。