プロもアマもこぞって参加する、ロンドンマラソン。アマチュアの参加希望者も多く、毎年厳選な抽選によって選ばれし者だけが出場できる。(別途、チャリティ枠もあり)

今回は、今年の大会に参加したエマ・ロフハゲン氏によるイブニング・スタンダード紙の記事、「参加申し込みをする前に知っておきたかった10のこと」から一部抜粋してご紹介。ロンドンに限らず、今後マラソン大会に出場することをご検討中の方は参考にしてほしい。


1.トレーニングには計り知れないほどの時間がかかる

各人のトレーニング・プランにもよるが、大会当日までの4カ月間は週に3〜5回は走るので、多くの時間をターマックの上で費やすことになる。もちろん走る時間だけを確保すれば良いわけではなく、その前後に摂る食事(その準備時間も忘れずに)やウォームアップ、クールダウン、ストレッチにも十分な時間を取らなければならない。

目覚まし時計はいつもより数時間早くセット。特にフルタイムの仕事をしている人のスケジュールは根本的に変わることになる。平日の夜の誘いには「ごめんなさい、走りに行かなければならないので…」というフレーズを何度も何度も繰り返すことになる。

日曜日には週日よりも長めの距離を走るのだが、土曜の夜にお酒を飲んで、翌日30キロ以上走り込む…などということは到底無理なので、結局週末は2日とも走る以外のことは諦めないとならない。


2. 質の良いランニングギアやガジェットへの投資もバカにならない

ランニングには意外とお金がかかると言われる。趣味で楽しく走っている程度なら普通のランニングギアと安いスポーツウォッチで十分だが、一定の長距離を走るようになると、身に付けるもののクオリティが重要になってくる。

春に行われるロンドンマラソンに焦点を当てるとなるとトレーニングは真冬に始まるため、高品質の冬用ランニングレギンスと春用ショーツの両方を購入することが不可欠となる。長距離のランニングでも擦れを引き起こさないレギングスはそう多くなく、しかも高額だ。ランニング用のベストやベルトも必須。また、マラソンランナーにとって絶対に譲れないのが、ランニングウォッチ。多くのランナーはGarminを好んで使うが、その価格は130ポンド〜500ポンドで、追加機能のある機種を選べばもちろんその分値段も上がる。


3. 怪我は避けられない

大きな大会に向けてトレーニングを積んでいる最中の怪我は、大きな不安を引き起こし、落胆するものだ。しかしこれは決して珍しいことではなく、マラソン選手の3割が走ることに起因するトレーニング期間中の怪我を報告している。

ロフハゲン氏も、ランナーに起こり得る大小の怪我のほとんどを体験したという。中でも一番重症だったのが、レース本番が4週間後に迫ったタイミングで突然発症したランナー膝だったという。

このようなときに一番聞きたくない言葉は 「休息」だが、ここで無理をしないことが最重要だ。ロフハゲン氏がランナー膝を患ったのは、それまでのトレーニングで最長の距離を走る予定の週だった。今休んだらこれまで積み上げてきたトレーニングがすべて台無しになってしまうのではないかと恐怖を感じたという。しかし実際には、何週間も運動をしない状態が続くのでない限り、体力が顕著に低下することはない。とはいえ、怪我をしたら自己診断で済ませず、専門家に相談する価値は多いにある。最適な怪我の治療法を見つけてくれるだけでなく、大会に出場できないのではないかという不安を吐露する相手にもなり、心も癒してくれる。


4. 大会に向けての調整中はとてつもなく退屈な人間に成り下がる

「最近どうしてる?」「走る以外にはほぼ何もしてないの…。」マラソンのトレーニング期間に繰り返される会話だ。寝ても覚めてもランニングのことだけしか考えられず、気の毒なことに、家族や親しい友人たちにはラップタイムやケイデンス、体験したあらゆる怪我のことばかりを聞かせることになる。


5. 食べて食べて食べまくらないとならない

マラソンに限らず、あらゆる過酷なトレーニングには栄養摂取が重要課題だ。定期的に20キロ以上走るようになると、通常の1日のカロリー摂取量は1回のランニングの消費量よりも少ないため、これを補わないとならない。

大食いというと、多くの人(特に女性)は怯んでしまうかもしれないが、トレーニング中に体重が減少してきたら、それは食事が十分ではない可能性が高い。マラソンのトレーニングは美的目的のために行うべきではない。

長距離を走った後は30分以内にタンパク質を摂取することが不可欠だが、その日の残りの時間は一にも二にも炭水化物を摂ること。大会当日までの最後の1週間は、食事の70%を炭水化物にするのが理想的だ。


6. トレーニングは計画通りにはいかないもの

人生には予定外のことが起こりがち。怪我、病気、あるいは単に仕事が忙しくなるなど、当初立てたトレーニング計画を厳密に守ることができない理由はいくらでも出てくる。

計画はあくまでも大まかなガイドラインとし、トレーニングのどこに1番のフォーカスを当てるかを決め、ある程度臨機応変に対応するのが良いだろう。


7. 大会当日に禁物の「NEW」

そんなことは言われなくてもわかっていると思うだろう。しかし人間はふと思いついて、つい新しいことを始めてしまったりする。

ロフハゲン氏はロンドンマラソンの当日に新しいシューズを履いてしまったのだという。とは言ってもまっさらの新品というわけではなく、前の週に4回ほど履いて走っていたので大丈夫だと信じてしまったそうだ。しかしその結果は、紫色に腫れ上がった足の指。しばらく歩くのもやっとだったそうだ。

避けなければならない「NEW」はシューズだけではない。食べ物、飲み物、身につける物、走りのテクニックなど多岐にわたる。本番当日の栄養補給のためジェルを摂取するランナーもいるが、体が慣れていないと走っている最中にお腹を壊すこともある。


8. 自分を疑う瞬間が必ず来る

友人たちが暖かいパブで楽しくやっているであろうときに、自分は雨が降りしきるうす暗い2月に1人でひたすら走っている。すると「私はなぜこんなことをしてるんだろう。」という考えがよぎるだろう。

そんなときには、大会出場を決めたときの気持ちを思い返してみよう。応援しているチャリーティのためかもしれないし、健康のため、あるいは大会出場が人生の目標だったかもしれない。皆、それぞれの理由があったはずだ。


9. 最後の10キロ(6マイル)が一番キツイ!

有名なランニングのコーチが言った言葉に「最初の16キロは頭で走れ、次の16キロはこれまでしてきたトレーニングで走れ、最後の10キロは心で走れ」というのがある。

普通のランナーであれば、トレーニング中に走る最長距離は32キロ程度、つまり残りの約10キロは未知の世界だ。この「最後の10キロ」で、多くのランナーたちは大きな壁にぶち当たる。身体中がもうやめてくれと叫び出し、人によっては生きる意欲さえ失ってしまうほど辛くなる。

 ロフハゲン氏は、この最後の10キロ/6マイルの1マイルずつを愛する人たちに捧げる気持ちで乗り越えたという。


10. 観客はあなたの味方

ロンドンマラソン全体の雰囲気についてどこかで見聞きしたことはあるだろうか。そうだとしても、実際に体験するまでは何もわかっていなかったと思い知らされるだろう。

走っている最中に聴こうとプレイリストを用意していたとしても、結局は沿道を埋め尽くす人々の騒音に浸ってしまうに違いない。家の窓でトランペットを演奏している男性、ランナーたちを横目にポーチで踊っている女性、私の名前を呼んで応援してくれる会ったこともない人たち…。そのときに感じるものは何物にも変え難い。

ゴールに到達したらぜひとも感動の涙を流してほしい。あなたにはその価値があるのだから。