イギリスで一番人気のお昼ゴハンといえば、なんといってもサンドイッチ。しばしば「サーニー」の愛称で呼ばれたりもする。子どものお弁当はもちろんのこと、会社勤めのサラリーマン/ウーマンも、昼休みには街の至る所にあるサンドイッチショップに走る。カトラリー不要で食べやすく、具の種類も豊富で相手を選ばず、ガッツリ肉食系でもヴィーガンでも受け入れてくれるその包容力。お手頃価格なのも嬉しい。

「The British Sandwich & Food to Go Association」という団体が、毎年5月に「ブリティッシュ・サンドイッチ・ウィーク」を制定していることからも、イギリス国民がいかにサンドイッチを愛しているかがわかるだろう。


意外と複雑な作りのサンドイッチパック「スキレット」

三角に切ったサンドイッチをきれいにおさめるお馴染みのパック。これがスキレットだ。「最近のスキレットは紙製で見るからにエコっぽいし、透明のプラスチック部分から中身が見えるから便利で安心」程度の認識しかなかったが、あのスキレット、実はたいそう複雑なものらしい。

スキレットの紙の部分は、食品が腐敗する原因である酸素を遮断しサンドイッチを安全に長持ちさせるためにプラスチックでラミネート加工が施されている。パックを立体に組み立てるのに使われている糊と、中身が見える透明の窓部分は、ゴミになったときに分解されリサイクルできるよう、かなりトリッキーな混合物が使われている。そのため、複数の製造会社からそれぞれ違った材料を運ぶトラックが出す排ガス量もかなりのものだ。もちろん、サンドイッチそのものの材料を運ぶトラックだって忘れてはならない。


具体的に、サンドイッチの何が問題なのか

イギリス人が1年に消費する持ち帰りサンドイッチは、なんと55億個!1分で約10,000個が売れている計算だ。ホームメード分も含めると、なんやかやと車860万台分の排ガスを出しているという試算がある。

そういった意味で、最もエコなサンドイッチは「エッグ&貝割菜」だが、上記で触れた排ガス量のおよそ半分は「ベーコン+ソーセージ+エッグ(オールデー・ブレックファスト)」サンドによるものだというから驚きだ。

しかし、「大好きなベーコン+ソーセージ+エッグサンドを食べるのはやめないといけないのか!」と嘆くのはまだ早い。食品産業界は、政治家たちよりもずっと先を行っているからだ。


いくつかのサプライヤーはすでに、透明の窓部分を簡単に剥がせるよう工夫されたスキレットを製造している。また、酸素へのバリア性が高い上に堆肥化できる、半透明の「Sylvicta」という特殊紙も2020年から実用化されている。

大手スーパーマーケットのセインズベリーズ、アルディ、コープは、プラスチックを使わないスキレットをテスト中。アルディによると、うまくいけば、アルディの自社ブランドのサンドイッチだけで使い捨てプラスチックを年間30トンも減らすことができるという。

ラフバラ大学でも、再生可能なスキレットを研究中だ。蛍光性のナノ微粒子を注入することで、バクテリアの増殖をどの程度防げるかがキーとなる。

カーボンフットプリントを気にすることなく、大好きなフィリングの入ったサンドイッチが食べられるようになる日はもう目の前だ!