悪気がなかったり、単なるジョークだったり、友愛の気持ちを込めていたとしても、ネガティブな言葉が使いにくくなっている昨今だが、4月1日の「4月ばか」に文句をつける人はまだいないようだ。


エイプリルフールの由来

エイプリルフールの由来には諸説あるが、どうやら1582年まで遡るらしい。当時のフランスではユリウス暦(太陽暦)を採用しており、新年は春分あたりであった。しかしこのユリウス暦は128年で1日のズレが生じるため、この年に、誤差の少ないグレゴリオ暦に改暦したのだという。これにともない新年も1月1日となった。とはいえ、今のようにインターネットがあったわけではない。そのニュースが国全体に伝わるまで非常に時間がかかり、相変わらずユリウス暦で新年を祝う人たちも少なからず存在したため、そんな人たちを「4月ばか」と呼んでからかったのが始まりという説だ。

エイプリルフールの習慣がイギリスまで渡ってきたのは18世紀。以来、イギリス文化にすっかり定着している。ただ他の国と違うのは、イギリスにおいては4月1日であっても嘘をついていいのは正午までと決まっていること。その時間を超えて嘘をついたら、あなたはただの嘘つきとなってしまうのでご注意を。

さすが、モンティ・パイソンを生んだ国? 多くの人をだまくらかした過去の「エイプリルフール・サクセス・ストーリー」のいくつかをご紹介しよう。


①ロンドン塔で「ライオン入浴セレモニー」にご招待

1860年のロンドンで、多くの人が「Tower of London, Lion Washing Ceremony!」への招待状を受け取った。4月1日当日は何百人もの人が集まったが、もちろんロンドン塔にライオンはいないのであった。


②スパゲティは木から生える

1957年のこの日、時事問題を扱う超真面目番組『Panorama(BBC)』で、「木になるスパゲティがスイスで大豊作。害虫であるゾウムシが激減したことが主な理由ということだ」と伝えた。当時、まだ外国の食べ物にそれほど慣れていなかったイギリス人はまんまと騙されたという。中には、「どうやったらうちでもスパゲティの木を育てられるのか」と番組に連絡をしてきた人たちもいたそうだ。「トマト缶にスパゲティを何本か立てて、祈ってください。」というのがその答えだったとか。


③重力に逆らう

1976年、イギリスの著名な天文学者パトリック・ムーアがBBC2 Radioに出演してこう言った。「本日午前9時47分に『Jovian Plutonian Gravitational Effect(木星・冥王星重力効果)』を感じることができるだろう。その時間に木星と冥王星が直列になることで地球の引力が弱まると考えられる。」

きっかりこの時間にジャンプすれば、少しの間無重力体験ができるというのだが、一体どのくらいの人たちが試したのか気になるところだ。


④ビッグベンの時計がデジタル化

外国からの旅行者数が伸び悩んでいた1980年のイギリスで、BBCが以下のようなニュースを取り上げた。

「外国人にアンケートをとったところ『ロンドンの街は古臭い』『ビッグベンの時計は読みにくい』という回答がありました。また、回答者の90%以上が『ビッグベンがモダンに生まれ変わったらロンドンを訪れてみたい』と答えたということです。観光局はこの調査結果を重く見て、ビッグベンの時計のデジタル化を進める考えを示し、National Society for British Heritageもこれを承認しました。これにともない、時計のチャイムも「キンコンカン」から「ピー」というデジタル音に変わることになるということです。」

さすがにこれに騙されるイギリス人は多くはなかったが、おふざけにも程があるとかなりのひんしゅくを買い、BBCは謝罪に追い込まれた。

しっかり騙され最も多くの苦情を寄せたのは、BBC Overseas Service(現ワールドサービス)を聞いていた日本人だった。その中には、大西洋のど真ん中で仕事中だった漁師も含まれていたという。


⑤動物の権利

2016年、世界的でもっとも多くの人に読まれている雑誌の一つ、ナショナル・ジオグラフィック誌がTwitterでこう呟いた。「我々は今後、裸の動物の画像は一切掲載しない。」


エイプリルフールにうまい嘘をつくコツは、バレた後で一緒に笑えるかどうかだろうと再認識した次第。これは騙される!でも笑っちゃう、というエピソードはあっただろうか。

LOL
嘘をつくなら笑える嘘を